ャガール作品における女性 -最初の妻ベラを中心に-, マグリット作品における楽譜 -使用意図と音楽の関係-, ヒエロニムス・ボス ≪快楽の園≫について --祭壇画と婚礼画、二つの観点から--. 例えばですが、私の研究テーマである「親子心中」とか「一家心中」って、欧米や中国ではあまり起らないんです。韓国では起こりますが、日本と比べて圧倒的に少ない。, 岩本 私も最初は意外でした。私が大学生だったとき、中国人の先生に「どうして日本人は親子心中をするのか?中国人はしない」と言われて驚いたことが、このテーマを深める1つのきっかけになりました。, 岩本 親子心中という現象の根底にあるのは「家族間の問題は家族の中で解決しなくてはならない」という考え方ですが、これは中国や韓国からの影響を受けたものではないんです。さらに言えば、日本において親子心中が増えてきたのは大正時代からで、比較的新しい現象なんですよ。, 佐藤 ということは、親子心中の増加は西洋の影響を受けて起こったんですか? 先ほど、欧米では親子心中はあまり起こらないとおっしゃっていましたが。, 岩本 近代的な西洋の考え方に「公共(public)」があります。これを日本人は、中国や欧米とも違う少し独特な受け取り方をしたんです。たとえば公共空間では時間厳守しなくてはならないとか、そういった基準が1920年頃から日本に現れてくるんですが、日本ではこれが「人に迷惑をかけてはいけない」という規範につながっていったんです。この規範が私的空間、つまり家族にも浸透していって、「家族の問題は、家族の中で解決しなくてはならない」という考え方を生み出し、「親子心中」という現象が生じてくることになります。, 岩本 はい。「日本人は清潔好き、几帳面、真面目」といったイメージも、ある意味では『遠野物語』の河童や座敷童子と一緒で、一種の「神話」、つまり、人々が当たり前だと信じ込んでいる文化なんですね。そして、私たち民俗学者は、このような現代の「神話」を疑ってかかり、なぜそのような「神話」が信じられているのかを調べていきます。, 佐藤 人びとが当たり前に信じている「神話」に気がつくのって、非常に難しいのではないでしょうか?どうやって調べたり、検証したりできるのですか?, 岩本 代表的な方法として、たとえば新聞を使った検証が考えられます。新聞に書かれてある内容はもちろんですが、それと同時に、どのような事件を大きく取り上げ、それをどのように報道するのか、といったことにも注目します。, 佐藤 それが、先ほどおっしゃっていた、「マスメディアの日本的価値観による再編成」ですね。, 岩本 民俗学は、人類の営みに関する身近な疑問を掘り下げてきた人たちによる学問です。今でも民俗学会には、郷土史を調べている人だとか、お産の歴史を調べてきた助産師の方々なども多く所属していて、学生の時から民俗学をしてきた人間は多くないです。大学の関係者は半分もいないかもしれません。, 岩本 柳田國男は、民俗学を「それぞれの人間が社会的な判断力をつけるための学問」だと表現しています。アカデミズムとしての民俗学がなくなると、人類の営みに対する評価が非常に狭い視野の下で行なわれてしまい、ただのお国自慢に陥る危険性があります。民俗学を正しく機能させるには、学問的な方法や客観的な視野、批判的な姿勢がなければなりません。このような要素は大学で学ばなければ身につかないものだと思っています。, 佐藤 学問としての民俗学が重要ということですね。では、東大の学生はどのように民俗学という学問を学んでいるのでしょうか?, 岩本 東京大学で私たちが指導している学生のテーマは本当に多様です。私の学科である文化人類学コースは1学年に6、7人くらいしかいないんですが、教員は10人以上いるんです。, 岩本 学部生の場合、学生が卒論(卒業論文)を指導する担当の先生について、民俗学の基礎を体系的に学びます。修士課程や博士課程になると、テーマや方法に合わせて色々な先生にアドバイスをもらいに行ったりもできます。, 岩本 学生の学び方はかなり自由です。テーマだって、「人類が行なっていること」なら何でも範疇に入ります。指導に関しても学科(コース)全体で協力して実施しています。, 佐藤 最後になりますが、民俗学に向いている学生や、こうした興味があるならば民俗学に向いている、というものはありますか?, 岩本 私自身、父親との関係性というような個人的な悩みがあって家族の問題を調べ始めました。家族に関連することで言えば、どうやって結婚して子どもを産むかといった生殖医療の問題も、時代や国柄で考え方は全く違います。 人生の悩みを通して人類の営みにアプローチする, 岩本通弥(東京大学大学院総合文化研究科 超域文化科学・文化人類学コース教授) よろしくお願いします。, 佐藤 私が民俗学と聞いて思い出すのは、柳田國男や宮本常一です。なので、民俗学というと「自文化の話を聞き取って記録すること」というイメージが先立って、その先の仮説や考察といったいわゆる「科学」に結びつきません。民俗学とはどのような学問なのでしょうか?, 岩本 私が考えるに、現代の社会を捉えるのに、「過去の拘束性」に着目するのが民俗学の大きな特徴です。例えば、社会学だとアンケートなどの量的調査が中心です。民俗学はフィールドワークなどをして、内面から把握していきます。そうして人間の内面に注目すると、過去からの影響が大きいんですね。たとえば、過去に親から言われたことのような。, 佐藤 それは現代もですか? 昔の農村と違ってネットやマスメディアの影響が大きいので、現代は、過去からの影響は少ないと思っていました。, 岩本 確かに、現代では最も影響を与えている伝達手段は口伝ではなくマスメディアです。けれど、やはりマスメディアの言っていることだって日本の価値観をもとに再編成されますし、決してグローバルに画一化はされません。 江戸時代の武家女性に興味があり卒論を執筆 する予定だったが、武家女性の服飾に関する文 献が尐なかった為、先生と相談し同時代の武 家・町人・遊女の比較を行った q2 作成スケジュール テーマ設定は記憶不明 〔4年生〕 7月 期末レポートとして目次を提出 大学の図書館で見つけた柳田國男の書物との出会いから、民俗学の研究者の道に進んだ新谷尚紀先生。柳田の思想を受け継ぎ、フィールドワークにより、数多くの事例を集めて比較するという研究手法によって、日本の文化に関する新しい学説の数々を唱えてきました。 民俗学(みんぞくがく、英語: folklore studies / folkloristics )は、学問 領域のひとつ。 高度な文明を有する諸国家において、自国民の日常生活文化の歴史を、民間伝承をおもな資料として再構成しようとする学問で、民族学や文化人類学の近接領域である。 #研究室, 家族に関する「当たり前の考え方」を疑ってみよう #教養学部の人 大学の図書館で見つけた柳田國男の書物との出会いから、民俗学の研究者の道に進んだ新谷尚紀先生。柳田の思想を受け継ぎ、フィールドワークにより、数多くの事例を集めて比較するという研究手法によって、日本の文化に関する新しい学説の数々を唱えてきました。 日本及び韓国の近代家族と民俗文化の変容課程を民俗学・文化人類学的に追究するとともに、日常史研究にも取り組んでいる。, 「膜」と「RNA」の2つによって間違いのない生命現象を解明する―理学部・濡木理教授に聞く(1), 「キミの東大 高校生・受験生が東京大学をもっと知るためのサイト」は東京大学高大接続研究開発センターが運営する、公式のオンラインメディアです。. © The University of Tokyo - Center for Research and Development on Transition from Secondary to Higher Education. 五輪と万博をテーマにした本は経済史や政治史、社会学的な立場から数多く出版されてきた。 とりわけ64年の東京五輪と70年万博について、「『高度経済成長期に成功した二つのイベント』といった語りは一面的だと疑わざるを得ない」と畑中さん。 #民俗学 #研究室 11/9第7回 女と男の文化 続・赤松啓介+異装宿題解説 by 清水晴美 (11/13), 10/13第4回実践ゼミ 「宮本常一の叫び声」など by tanu (10/20), 10/13第4回実践ゼミ 「宮本常一の叫び声」など by 松島新太 (10/17), 前回、レポート提出先が不明だったので提出できなかった。第7回は、dotCampus…, 10、17日の訪問でのコミュニケーション(11:15-12:00 119F対面、12:00-12:…, 20201021 第5回基礎演習動画あれっ!記録した宿題がない。⇒on-lineでは、保…, 10、17日の訪問でのコミュニケーション(11:15-12:00 119F対面、12:00-12:45, ②  問い テーマ候補選定のために読んだ本、または、卒論で基本にするかもしれない本があれば示してください。, ③  なぜ森栗なのか、ブログ、論文、著書、授業内容を示して、その理由を示してください。, ④  可能なら、どのようなデータベース、フィールドを考えているのか、あればお教えください。この時点でわからなくても問題ないです。, ⑤  毎週のゼミ指導以外に、毎週6限などに、卒論をより深めるために非公式の研究会を実施します。参加可能でしょうか。, 10日 17日 ゼミの後、119Fにて個別質問を受けつけます。食事をとりながらもOK, 8 日本書紀に見る自然災害と疾病 文学にみる自然災害と疾病 平安時代の「怪異」と卜占, 10 畿内・瀬戸内海の交通と流通 中世前期の高野参詣における場と人々 東シナ海と倭寇, 10 日本山海名所図会、仁助噺、製塩秘録、阿波藍法伝授書、紙漉き重宝記、鉄山必要記事、銀山記, 14 部落 書式留帳、京都柳原町史、雑色要録、大阪西浜町の沿革と産業、賤者考(皮張大明神), 16 奇談、奇聞 猫人、奇病、鬼人を信じ、安倍川餅、妙薬・黒焼き、いぼの呪い、すり、頭痛, 2 月と若水、不死、星の民俗、風の民俗、死者への怖れ、魂呼び、浄土、常世、夕陽信仰、うまれかわり, 12 昭和史、戦後村落の変貌、故郷とアルバム、霊魂と骨、移民のくに意識、戦争と民俗, ◎笹森儀介『南島探検』、ルイスフロイス『日本史』など東洋文庫 Japanknowledgeでon-line検索★, 6 日本人の遊び、野球、物見湯山、賭博・パチンコ、遊郭、ラブホテル、寄席からテレビへ, 9 昭和世相史、食卓、住まい方、故郷、男女交際の昭和史、病気と治療、都市と家庭生活, 11 伊吹、飯動山と甲賀忍者、愛宕山、大峰山、三輪山、書写・広峰山・一乗寺、伽耶院、鉱山と修験, 2 貧民窟探検、わが新開地、大阪朝鮮人生活概況、道頓堀史、浅草経済学、銀座解剖、新宿史, 6 博覧会出品飲食物、料理、天婦羅通、蕎麦通、京阪食べ歩き、昭和初期児童の弁当、住宅改良・同潤会住宅(公団住宅の起源), 7 サラリーマン、諸職商人(東西屋、洗濯屋、救世軍・・・)、大阪の問屋街、大東京物語, 11 天皇の噂、南朝系熊沢天皇、二・二六事件と天皇の影、天皇と部落、河原巻物と天皇制, 18 浮浪児・香具師、糞尿、漫画正ちゃん、少女小説、浪華漫才、聞書(遊郭・チンドン屋、下町), ・ムラ維持のためのヨバイ(公事)+戦争下の性民俗(国家VSムラ[小農を基礎とする近世郷村]), ・子どもとその成長を、家のシツケではなく、村の公事ととらえた。例:間引き・初潮・名づけ. 演劇学: 浅利慶太の演劇思想 -武田泰淳作『ひかりごけ』の上演にみる- 演劇学 「美輪明宏」という存在における演劇性: 演劇学: 狂言『附子』の変化について -三流派の台本の比較から- 演劇学 『ソナチネ』における色彩関係とその意味: 映画学 文系大学4年生で、いま卒業論文に取りかかっています。しかしながら、何冊か本を読んではいるのですが、いまだに卒論の具体的なテーマが見つかりません(焦)。私の学部で専攻している分野は東アジア、主に中国で、私はitに興味がある為 卒論研究のテーマ例 4年生は、生活文化からテーマを選び、卒論にまとめる。たとえば、「ハゼからみた三河湾の 環境」、「昭和30年代の普段の食事」、「銭湯が消えたわけ」、「おばあちゃんの一生」などが 考えられる。 運営方法 ② 問い テーマ候補選定のために読んだ本、または、卒論で基本にするかもしれない本があれば示してください。 ③ なぜ森栗なのか、ブログ、論文、著書、授業内容を示して、その理由を示してください。 卒論のテーマには面白いものややりやすいものなど様々な研究があるかと思います。今回は卒業論文や卒業研究、レポートのテーマの決め方や、実際の論文や研究で面白いものや個性的なものを例に挙げてご紹介していきます。また、分かりやすい卒論の書き方についてもまとめてみました! 奈良大学のホームページ。奈良大学の学部、大学院、センター等の案内、広報案内、教員から受験生へのメッセージ、就職情報など奈良大に関する情報をご覧頂けます。 そんな新谷先生が、次世代の民俗学の発展を見据え、今新たに提唱するのが民俗伝承学という考え方です。歴史書では語られない日本の歴史が見えてくるという民俗伝承学について、新谷先生に詳しくお聞きしました。, 民俗学という言葉は、明治に日本に入ってきた英語のfolklore(フォークロア)という言葉の翻訳語です。もとの意味は、folk:庶民のlore:知恵という合成語なのですが、今日では「民間の風俗や習慣を研究する学問」という意味合いで理解されています。, しかし、日本の民俗学の礎をつくった柳田國男は、「Tradition Populaire(トラディション・ポピュレール)」というフランス語に注目し、これを民間伝承と訳し、自身の学問の基本としました。, 「Tradition」は、伝統と訳されることもありますが、柳田は伝統ではなく「伝承」と訳しました。伝統は良いものだけを取捨選択した感じの言葉となりますが、伝承は悪いものも含めて伝えられる、運動という意味合いがあるからです。柳田は良いものも悪いものも含めた、トラディションの全体の中から見えてくるものがあると考えていたのです。, 私は柳田國男やその弟子と自称する折口信夫が創生した、この民俗学の流れを正しく次の世代に伝えるために、あらためて「民俗伝承学」という名前を提唱していこうとしています。これを英語で言うならば、「Tradition and Transition (トラディション アンド トランジッション)の研究」、つまり、Tradition:伝承とTransition:変遷との両者を含めた研究という意味になると考えています。, 変わりにくいものと変わってしまうものとが、表裏一体となっている生活文化の歴史情報が、民俗伝承学の対象となるものです。, 私が、これまで研究対象としてきたのは、1.両墓制という土葬の時代の墓制、2.死と葬儀と墓の民俗、3.戦争と死者・記憶と慰霊、4.身近なしぐさとその意味、5.貨幣とは何か、6.人の一生と儀礼、7.神とは何か、神社の神事と祭礼、8.高度経済成長と生活変化、などさまざまです。, 人にお金を渡すときに投げてわたすのはたいへん失礼です。それなのに、私たちは何も考えずに賽銭のコインを投げています。, それについて研究を進めて行くと、お金には、経済的な役割と経済外的な役割との両方がある、その経済外的な役割として、自分の身についている災厄やケガレを吸着してくれている、そんな考えが潜在していることが見えてきたのです。, 自分の心身のケガレを託したお金を神社や寺院の賽銭箱に投げ捨てることによって、祓え清めてもらえる、そのような考え方があるからだということがわかってきたのです。お金を投げ捨てることによって、自分の心身を清めているのです。, つまり、神社や寺院は、人びとのケガレを投げ捨てる場所なのです。いわばゴミ捨て場です。そんなバチ当たりな結論が出てくるのです。, でも、鎌倉には銭洗い弁天もあるし、ローマのトレビの泉は有名です。清水の湧いている池にはよくコインが投げ込まれています。聖なる清水の湧くところに建てられている神社や寺院の例も、古くから多くあります。, 神社や寺院はただのゴミ捨て場ではなく、人びとのケガレを祓え清める場所である、ということがみえてきます。貨幣はケガレの吸引装置であり、神社や寺院はケガレの吸引浄化装置である、というしくみがみえてくるのです。, それは、身体的には病気やケガや出血など、自然的には災害や飢饉など、社会的には暴力や犯罪など、いずれも生命活動を脅かすもので、それらの究極は死です。, 不潔・危険・感染・強力という四つの特徴をそなえています。ですから、祓えや清めという対処が必要です。, たとえば、東日本各地の村境に祭られている道祖神ですが、それは兄妹相姦の伝承を伴いながら火中に投ぜられる石像であったり、人びとのケガレを依りつけた藁で作られ、陰陽の性器が強調される藁人形であったりしています。, つまり、道祖神は人びとのケガレが集積された人形であり、それが村境へと祓え出されることによってその価値が逆転して神へと変身しているのです。そこには、ケガレが祓えという一定の儀礼を経ることによって、カミへと祀りあげられるというしくみがある、ということがわかります。, 黄泉の国を訪れて死の穢れに触れてしまった伊弉諾尊(イザナギ)が、小門の阿波岐原で禊ぎ祓えをした時に、死体を見てしまった左の眼をまず洗ったときに生れたのが、天照大神(アマテラスオオカミ)であり、死臭を嗅いでしまった鼻を洗ったときに生まれたのが素戔嗚尊(スサノオノミコト)だといっています。, 葬儀の棺担ぎ役のひとが脱ぎ捨てた草履を拾って履くと足が丈夫になる、汚い馬糞を踏むと足が速くなる、女性の髪の毛を船の守り神の船玉さまのご神体として祀る、などそのような例は数限りなくあります。, このような民俗伝承を集約して設定したのが、死をめぐる分析概念としてのケガレでした。, すると、ケガレ:死の力 に対するものが、カミ:生命力 という関係が浮かび上がってきます。ケガレ:power of death に対する カミ:power of life という対になる分析概念、ケガレとカミという対概念が設定されるのです。, 柳田と折口が導き出した分析概念の一つが「ハレとケ」でした。それに加えて、あらたに導き出したのが「ケガレとカミ」というこの分析概念でした。それを、民俗伝承学の成果の一つとして提供したのです。, このように日本各地の民俗伝承を見ていくと、歴史学では語られなかった歴史の世界が見えてきます。, 歴史学や考古学が、いわば静止画で歴史をとらえるのに対して、民俗学・民俗伝承学は動画で歴史をとらえます。そうすると、同じものを扱っていても、読み解く世界と意味とが微妙に異なってくるのです。そして、その画素の緻密な静止画の世界も歴史ですし、つねに伝承という運動をくりかえしている動画の世界も歴史であるということがいえるのです。, 私は広島県の山奥の高校を出た後、早稲田大学で文献の歴史学を勉強しました。地元の広島大学にも合格しましたが、それは東京に行きたいという理由を正当化するためでした。地元の広島大学に合格できないような者が東京の私立に行ってどうするのか、というような無言の圧力を感じていたからです。, 実家は農家だったのですが、子どもの頃に家の仕事を手伝わされるのが嫌で、家は長男が継ぐことが決まっていたから、私は高校の頃から家を出て下宿していました。, 家を出ると、自由な時間がたくさんあり、若いころのこと、哲学に憧れをもつようになったのです。R.デカルトの『方法序説』から始まり、西田幾多郎や和辻哲郎など日本の思想にも興味をもつようになり、日本の文化を哲学的な視点で考えてみたいと思うようになりました。, 大学に入ってからはデモに明け暮れる学部の教室よりも、よく図書館に通い、いろいろな本を読みました。そこで、柳田國男が中心となって発行していた『民間伝承』という雑誌に出会ったのです。, 歴史の教科書に載っていないような昔からのしきたりや習わしが、歴史を研究する材料になるということが書いてあり、とても惹かれました。, そうして、柳田にはまり込んだ結果、卒業論文では「憑き物習俗の研究」がテーマになりました。, 広島県の山間部で過ごした子ども時代に、犬神という憑き物の話をよく聞いたことがあり、島根県域にもまたがって憑き物筋の家の話がたくさんあったのです。, 卒業論文を指導してもらった先生も、民俗学は、民俗伝承の多くの事例を集めて、新旧を比べてみる学問だといわれ、憑き物習俗のような伝承も、一つの歴史情報として価値があるといって、興味をもってもらえて、とてもやる気になりました。, 「多くの同類事例を集めて新旧を比べる」というのはたしかに民俗学の基本で、柳田がそのことを熱心に説いていました。歴史学は、古文書や古記録の文言一つからでも事実がわかる単独立証の方法、民俗学は一つの事例だけでは分からない、だから、たくさんの同類事例を集めて、なるべく画素を細かくすればするほど、事実が見えてくるという重出立証の方法なのです。私は卒業論文での取り組みから、最初にその基本を学びました。, 大学院に進み、修士課程に入ってから、憑き物の犬神の調査をその本場ともいうべき四国地方で進めようとしました。, その旅の途中で、竹垣で囲われた墓がいくつも並んでいる墓地を見つけました。そこには墓石が建てられていないのです。墓石はそことは別のお堂のところにあるのです。埋める場所と墓石を建てる場所とがちがう、つまり、それは両墓制とよばれるものだということを知り、とても興味をもって興奮しました。新しいテーマとの出会いです。, 両墓制を研究したいと考え、いろいろな先生に相談したところ、両墓制の研究はもう古い、ブームは終わっているという話でした。でも図書館で、自分なりに先行研究や文献を調べてみると、いろいろな説がありましたが、私が抱いた「なぜ別の場所に埋めるのか」という疑問は、解決されていませんでした。, 私は柳田の教えに従い、各地を歩き回り、2年間で約150地区の両墓制の事例を現地で調べました。そうした中で、石塔を建てない地域、埋葬墓地から離れて遠くに建てる地域、すぐ近くに隣接して建てる地域、埋葬墓地に建てる地域、の別があることが分かりました。, そこから、昔はすべて埋めるだけの墓だったのが、石塔という新しい要素が中世末から近世初頭にそれぞれの地域に入って来た時に、その取り入れ方にそのようなバリエーションがあったのだという新しい説を唱え、論文にまとめました。, 私はこの研究を通して、柳田が言っていた、同じ時代に生きていた人たちの生活慣習の中にも、古い層、中間の層、新しい層が、まだら模様で伝承されているということを知ることができたと考えています。, 生活慣習の中に新しい技術も入ってきていますし、同時に古い信仰も残っている、中間的な思考も残っている、そういう観点で見ていくことで、歴史記録に書かれていない歴史の事実が見えるという提案をしていく、それが民俗伝承学なのです。, 民俗学の強みは、絶対的な本質論ではなく相対的な変遷論であること。その変遷の動態を分析するのが伝承学の視点です。, 民俗伝承学は、歴史学、人類学、社会学、宗教学など、他の領域と対話し協業できる独創的な学問です。歴史や建築、経済など、他の分野と共同研究することが、より自分たちの学問を鍛えることにつながると考えています。, 現在は、國學院大学で伝承文学というコースで、民俗学を教えていますが、ここで私は、柳田、折口の学問の思想と技能を受け継ぐ、次の世代の民俗学の研究者を育てることを目指しています。, その小さな一つの成果として、私が教えた学生たちが書いた論文を編纂した論文集『民俗伝承学の視点と方法―新しい歴史学への招待―』(吉川弘文館)を、2018年12月に出版しました。これでやっと、柳田、折口へ小さな恩返しができたかな、と感じているところです。, *2020年4月2日より毎週木曜午後8時30分から、NHKカルチャーラジオ文学の世界で新谷尚紀先生の『”遠野物語”を読みとく』が放送中です↓。, https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=1929_01, 1948年、広島県生まれ。1971年早稲田大学第一文学部卒業。1977年早稲田大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得。国立歴史民俗博物館名誉教授、国立総合研究大学院大学名誉教授などを歴任。現在は國學院大學文学部教授。社会学博士。『伊勢神宮と出雲大社—「日本」と「天皇」の誕生』(講談社選書メチエ)、『日本人の春夏秋冬─季節の行事と祝いごと』(小学館)、『お葬式—死と慰霊の日本史』(吉川弘文館)、『神道入門』(ちくま新書)など著書多数。2018年11月に、國學院大学の教え子たちの論文をまとめた『民俗伝承学の視点と方法―新しい歴史学への招待―』(吉川弘文館)を出版。, [ 特集 ] 民俗学者、新谷尚紀先生に聞く「生活の中にある日本の歴史=新しい民俗学の世界」, 未来に向けて森を蘇らせる活動をしている「アファンの森」理事長、C.W.ニコルさんを訪ねました。, 日本犬はオオカミと最も遺伝子が近い? そのルーツを紐解きに、麻布大学教授菊水健史氏を訪ねました。, 400年間守り継いだ城を次世代に残す“最後の姫”。犬山城第12代城主・成瀬正俊の長女、成瀬淳子さん, Copyright© Shidax Co Ltd., All rights reserved.